東京地方裁判所 昭和50年(ワ)1683号 判決 1978年2月27日
原告 嶋崎義高 外一名
被告 国
主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
事 実 <省略>
理由
一 義信が海上自衛隊横須賀基地第一輸送隊所属の本艦に乗組む海上自衛官であり、昭和四七年三月四日当時は一等海士であつたこと、右同日神奈川県横須賀市の長浦港に停泊中の本艦内で実施された青酸ガスによる本件くん蒸作業に際し、義信は警戒員に指名され、本艦〇一甲板右舷ブルワーク付近で保安警戒に当たつていたが、午前一〇時五七分ころ本件防水扉を開けて本艦内に入つたため、青酸ガスを吸引して意識不明に陥り、午前一一時五六分横須賀市所在の田浦共済病院において青酸中毒により死亡したこと、本件防水扉を含む各扉に施錠がなされなかつたこと、義信ら警戒員のためにガスマスクが用意されなかつたこと、義信が死亡当時満二〇歳であり、一等海士一号俸の給与を受けていたこと、被告が原告らに対し遺族補償一時金及び退職手当として合計金二〇五万三八九〇円を支払つたことは、当事者間に争いがない。
二 最初に本件の事実経過を検討する。
成立に争いのない甲第一号証、第二号証の一ないし七(但し、同号証の七のうち後記採用しない部分を除く。)第三ないし第六号証の各一、二、第七号証、乙第一ないし第五号証、原本の存在及び成立に争いのない同第六号証、証人飯岡平周、同鈴木利信、同鈴木慶治(但し、後記採用しない部分を除く。同勝田保隆及び同中田外二(但し、後記採用しない部分を除く。)の各証言、当裁判所の検証の結果を総合すると、次の事実が認められ、これに反する甲第二号証の七の一部、証人鈴木慶治、同中田外二及び原告嶋崎義高本人の各供述の一部は前掲各証拠に照らし採用しえない。
1 本艦は海上自衛隊横須賀基地所属の輸送艦であり(この点は当事者間に争いがない。)、長さ一〇〇メートル・幅一五・二メートル・基準排水量一六五〇トンである。
2 昭和四七年二月ころ、本艦の中村亘艦長は、艦内のねずみ族及び虫類を駆除するために同年三月四日艦内において青酸ガスによるくん蒸(本件くん蒸作業)を行なうこととし、担当部局に手配した。その結果、本件くん蒸作業を訴外日栄商工株式会社が請負い、同会社はさらに、青酸ガスくん蒸の専門業者である訴外有限会社大和(その後、有限会社大和クリーンハウスと商号変更した。)に委嘱した。なお、青酸ガスによるくん蒸は検疫執行規定において定められた方法の一であり、船舶におけるねずみ族及び虫類の駆除法としては一般的なものである。
3 同年二月二八日横須賀市長浦港に停泊中の本艦において、本艦副長、補給長、甲板士官、各分隊先任海曹及び各班長等と有限会社大和の担当者である勝田保隆らとの間で、本件くん蒸作業の実施に関する注意事項及び準備事項につき打合せが行なわれた。その際、有限会社大和の担当者は、右注意事項及び準備事項を記載した三種類の注意書(乙第一ないし第三号証)各三〇部ほどを本艦側に交付し、掲示・回覧するよう求めた。同日午後一時の課業整列の際、義信の所属する第三分隊の先任海曹である鈴木利信一曹は副長の指示により分隊員に対し、本件くん蒸作業の実施予定等の伝達をするとともに、青酸ガスが生命にかかわる非常に危険なものであること等を注意し、詳しい注意事項及び準備事項については掲示板に掲げる注意書を読むよう指示した。そして、右課業整列終了後、前記注意書のうち、青酸ガスが人畜に対しても猛毒であり取扱上注意を欠くと人命を失うに至ること等が記載されたもの(乙第一号証)と飲食物の搬出等の準備事項及びくん蒸後の注意事項が記載されたもの(乙第二号証)が艦内の各掲示板に貼付された。なお、義信使用のベツドの存する第三分隊第一四居住区の掲示板は、右ベツドの間近にあつた。
4 同年三月三日午前九時三三分、本艦は八丈島災害派遣行動を終えて前記長浦港に帰り、F-4バースに係留中の自衛艦「しもきた」の左舷に接舷係留した。同日午後一時の課業整列の際、副長及び甲板士官が義信を含む全乗組員に対し、中村艦長の発した「青酸ガスくん蒸の実施に関するしれとこ日日命令」(乙第四号証に記載されたもの)につき説明し、準備事項及び青酸ガスが生命にかかわる危険性を有すること等の注意事項の大要を指示し、さらに、第三分隊においては鈴木利信一曹が義信らに対し、前記注意書(乙第一号証)に基づき、青酸ガスは非常な猛毒であり吸引すれば死亡すること等の詳細な注意を与え、飲食物の搬出等の準備事項を実施させた。同日午後、本件くん蒸作業当日に保安警戒に当たる警戒員四名が指名されたが、義信は前年の青酸ガスくん蒸作業の際にも警戒員の任務に就いたことが考慮され、再び警戒員に指名された。そして、義信及び同じく警戒員に指名された秋葉寿雄二曹については、本件くん蒸作業中の保安警戒もさることながら、右作業の前後に発電機や配電盤を操作すること及びくん蒸後自然換気した後に送風機を始動することが事実上主たる任務であり、義信らは右指名の際これらの任務を指示された。
5 同年三月四日は本件くん蒸作業の行なわれる当日であり、当直士官の飯岡平周一尉は、午前七時四〇分ころ乗艦した有限会社大和の作業員である勝田保隆、中田外二らと最終的打合せを行なつた。午前八時、当直員六名、警戒員四名及び若干名を除くその余の乗組員は、接舷している「しもきた」に移乗して制服等を同艦甲板上に置いて上陸し、横須賀基地内のグランドで行なわれたバレーボール競技に参加した。午前八時一五分、青酸ガスによる危険を防止するため本艦を「しもきた」から約一〇メートル間隔に移動した後係留した。次いで、前記作業員は本件防水扉を含む各扉や舷窓等を閉じてケツチ(取手を九〇度回して緊締する形のロツク)をかけたうえ(本件防水扉には四個のケツチが付いている。)、本件防水扉等のように間隔を生じた箇所には、細長いクラフト紙の片面に糊を塗つたものを用いて目張りを施し、さらに、本件防水扉を含む各扉の外側に、赤地に白く「猛毒ガス燻蒸中、立入禁止」等と書かれ、髑髏の図案の入つた標示(縦約二〇センチメートル・横約三六センチメートルの長方形。乙第五号証のうち最下部の社名部分が切除されたもの。)を貼付した。午前一〇時二〇分、飯岡一尉の指示により、義信が発電機を停止し、秋葉二曹が配電盤を操作した。午前一〇時二五分、前記作業員がガスマスクの着用を始めている第一甲板上の五、六メートル離れた所で、飯岡一尉は当直員及び警戒員に対し、今からくん蒸を開始するが青酸ガスは非常に危険であり一呼吸でも死ぬから絶対に艦内に立入らぬよう注意したうえ、くん蒸中は当直員は第一甲板カーゴハツチ付近、警戒員は〇一甲板右舷ブルワーク内に位置して保安警戒に当たるよう指示した。午前一〇時三二分、前記作業員は青酸ガス発生剤の艦内への散布を終えた後、全艦にわたりガス漏れの検査を行なつたが、本件防水扉につきガス漏れがあつたので、同扉上部の周囲約四分の一につき外側から目張りを施した。
6 一方、本艦の乗組員であり前記バレーボール競技に参加していた鈴木慶治一曹は、タバコを取りに制服等の置いてある「しもきた」の甲板に戻つた際、身分証明書を本艦内第二甲板の先任海曹室のロツカー内に置き忘れてきたことに気付いた。同人は同日(土曜日)午後の勤務時間外に私用で外出するつもりであつたため、通門の際提示するために身分証明書が必要であつた。そこで、同人は午前一〇時三〇分ころ、「しもきた」の甲板上から本艦第一甲板上の内海孝夫一曹に対し、もう本艦内に入れないかと尋ね、もはや入れない旨の答を得た。しばらくして鈴木慶治一曹は、同人と同じく第三分隊に属する義信が本艦〇一甲板右舷ブルワーク内にいるのを見付け、警戒員である義信なら同一曹より早く本艦内に入れる機会があるものと考え、午前一〇時四五分ころ「しもきた」の〇一甲板左舷ブルワーク付近から義信に対し、「入室できるようになつたらCPO室(先任海曹室)から身分証明書を取つてきてくれ。」と大声で頼んだところ、同人は手を上げて了承したことを示した。
7 それから間もない午前一〇時五五分ころ、義信は、前記ブルワークから出て第一甲板に降り、本件防水扉の四個のケツチを外し、目張りを剥がし、タオルで鼻と口を覆つて艦内に入つた。(同人が本件防水扉を開けて艦内に入つたことは、当事者間に争いがない。)一方、「しもきた」の甲板上で喫煙を終えた鈴木慶治一曹は、義信が艦内に入るのを認め、驚いて制止の叫びをあげたが、義信が戻らないので、本艦上にいた当直員の北村秀美一士に右事実を告げた。午前一〇時五七分、義信を救出するため、前記作業員がガスマスクを着用して艦内に入り、先任海曹室のある第二甲板の階段付近に倒れていた義信を見付け、第一甲板上に運び出した。義信が意識不明に陥つていたため、警戒員等が人工呼吸、心臓マツサージ、強心剤の注射及び酸素吸入器を用いて手当をなした。午前一一時一五分、到着した救急車により、義信は横須賀市内の田浦共済病院に送られ、医師の診療を受けたが、午前一一時五六分青酸中毒のため死亡するに至つた(義信が右時刻に青酸中毒のため死亡したことは、当事者間に争いがない。)。なお、義信が艦内に入つた時点の前後において、艦内には特に異常な事態は起きていなかつた。
三1 被告が義信に対し安全配慮義務を負うか否か(請求原因2(一))につき判断する。
前記一のとおり義信は国家公務員たる海上自衛官であつたから、被告である国は同人に対し、単に給与支払義務を負うのみならず、被告が公務遂行のために設置すべき施設、器具等の設置管理又は義信が被告もしくは上司の指示により遂行する公務の管理にあたり、義信の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を信義則上負うものと解すべきである。
したがつて、原告らの右主張は理由がある。
2 次に、被告が右安全配慮義務を履行したか否か(抗弁1)を検討する。
この点については、前記二認定のとおり、昭和四七年二月二八日本艦副長、補給長、各分隊先任海曹及び各班長らが有限会社大和の担当者との間で、本件くん蒸作業の注意事項及び準備等につき打合せを行なつたこと、同日午後一時の課業整列の際、義信の所属する第三分隊の先任海曹である鈴木利信一曹が義信ら分隊員に対し、本件くん蒸作業の実施予定等の伝達をするとともに、青酸ガスが生命にかかわる非常に危険なものであること等を注意し、詳細については掲示板に掲げる注意書を読むよう指示したこと、右課業整列終了後、有限会社大和から前記打合せの際に交付された注意書等のうち、青酸ガスが人畜に対しても猛毒であり取扱上注意を欠くと人命を失うに至ること等の記載されたもの(乙第一号証)と、飲食物の搬出等の準備事項及びくん蒸後の注意事項の記載されたもの(乙第二号証)とが各掲示板に貼付されたこと、義信の使用するベツトがある第三分隊第一四居住区の掲示板は、義信のベツトの間近にあつたこと、同年三月三日午後一時の課業整列の際、副長及び甲板士官が全乗組員に対し、中村艦長が本件くん蒸作業につき発した日日命令(乙第四号証)の説明、準備事項及び青酸ガスが生命にかかわる危険性を有すること等の注意事項の大要を指示し、さらに、義信ら第三分隊員に対しては鈴木利信一曹が、青酸ガスは非常な猛毒であり吸引すれば死亡すること等詳細な注意を与え、飲食物の搬出等の準備事項を実施させたこと、義信は同日午後本件くん蒸作業の警戒員に指名され、発電機や送風機の操作及び保安警戒の任務を命じられたが、同人が指名されるについては、同人が前年の青酸ガスくん蒸作業の際にも警戒員の任務に就いたことが考慮されたこと、同月四日当直士官の飯岡一尉が有限会社大和の作業員と最終的打合せを行い、同作業員は本件防水扉を含む各扉や舷窓等をすべて閉じ、ケツチで緊締したうえ、間隙を生じた本件防水扉等の箇所には内側から目張りを施し、さらに各扉の外側に赤地に白く「猛毒ガス燻蒸中、立入禁止」等と書かれ、髑髏の図案の入つた標示が貼られたこと、そして同日午前一〇時二五分、前記作業員がガスマスクの着用を始めている第一甲板上の五、六メートル離れた所において、飯岡一尉が当直員及び義信ら警戒員に対し、今からくん蒸を開始するが青酸ガスは非常に危険で一呼吸でも死ぬから絶対に艦内に立入らぬよう注意し、警戒員に対しては〇一甲板右舷ブルワーク内に位置して警戒に当たるよう指示したこと、前記作業員が青酸ガス発生剤を艦内に撒布した後、本件防水扉からガス漏れがあつたので、右作業員が同扉の外側から上部に目張りを施したこと、したがつて、本件防水扉を外側から見ると、四個のケツチがかかつていて、上部に目張りがあり横に「猛毒ガス燻蒸中、立入禁止」等と書かれた標示が貼られている状態であること、以上の事実が認められる。
右各事実からすれば、中村艦長、副長、当日の当直士官である飯岡一尉、義信の所属する第三分隊の先任海曹である鈴木利信一曹等において、義信に対し青酸ガスの危険性につき充分な注意を与え、同人を警戒員に選任し任務内容を指示するにつき充分な考慮を払い、且つ、本件防水扉等につき開扉及び立入りを厳禁する趣旨を明示する措置を充分に行なつたものというべきである。なお、原告らは、本件防水扉に施錠し、警戒員のためにガスマスクを用意すべきことを主張するけれども、後記四に述べるとおりそこまでの必要はないと解するのが相当である。
右のとおり被告は義信に対し、前記安全配慮義務を完全に履行したものである。
四 次に原告らは、本件防水扉が施錠されなかつたこと及び義信ら警戒員のためガスマスクが用意されなかつたことをもつて、本艦の管理につき瑕疵が存する旨主張する(請求原因2(二))。
そして、本件防水扉が施錠されなかつたこと及び義信ら警戒員のためにガスマスクが用意されなかつたことは、前記一のとおり当事者間に争いがない。
しかし、前記二認定のとおり、本件防水扉は四個のケツチによつて緊締され、且つ、内外から目張りがなされ、さらに同扉外側付近には一見して判読できる「猛毒ガス燻蒸中、立入禁止」等と書かれた標示が貼られている状況であつた。しかも、本件くん蒸作業の際に本艦に乗艦していた者は有限会社大和の作業員の外、前記二、三に判断したとおり、青酸ガスの危険性につき充分な注意を受け、且つ、飲食物等の艦内からの搬出及び本艦と「しもきた」との間隔をあけたこと等の準備作業、有限会社大和の作業員がガスマスクを着用したこと等から、青酸ガスの危険性を具体的に認識し得べき当直員及び警戒員のみであることからすれば、本件防水扉につき被告がなすべき管理としては、前記ケツチによる緊締、目張り及び立入禁止の標示の貼付をもつて充分というべきであり、右管理の瑕疵を認めることはできない。
また、ガスマスクの用意の点についても、前記一、二のとおり、本艦は港に停泊中であり、しかも、本件くん蒸作業の直前に発電機をも停止した状態であるから、有限会社大和の作業員では処理できず警戒員等が本艦内に立入ることを必要とするような異常事態が発生する蓋然性は殆んどないと考えられるのであり、現に義信が本艦内に立入つた理由も前記二6、7のとおり、本艦内に異常事態が発生したからではないのである。さらに、義信及び同じく警戒員に指名された秋葉寿雄二曹については、本件くん蒸作業中の保安警戒もさることながら、右作業の前後に発電機や配電盤を操作すること及びくん蒸後自然換気した後に送風機を始動することが主たる任務であり、それゆえ義信らは甲板上の巡回等は命じられることもなく、本件くん蒸作業中は〇一甲板右舷ブルワーク内に位置して保安警戒に当たることのみを指示されていたのである。
したがつて、右の如き任務に就く義信を含め警戒員らのためにガスマスクの用意が必要であるとは解し得ず、右用意のなされなかつたことをもつて本艦の管理につき瑕疵が存するものとはいい得ないのである。
右のとおり原告らの前記主張は採用しえない。
五 次に、原告らは、中村艦長、飯岡一尉及び鈴木利信一曹に過失が存する旨主張する(請求原因2(三))。
しかし、前記二ないし四に判断したとおり、青酸ガスの危険性につき義信に対する注意・指導、義信に対する警戒員の任務内容の指示・本件防水扉が施錠されなかつたこと及び義信ら警戒員のためにガスマスクが用意されなかつたことのいずれについても、中村艦長、飯岡一尉及び鈴木利信一曹において過失が存するものとは認められず、原告らの前記主張は採用しえない。
六1 最後に、原告らは、鈴木慶治一曹の過失を主張する(請求原因2(四))。
そして、前記二6のとおり、鈴木慶治一曹は、本艦と約一〇メートルの間隔で停泊していた自衛艦「しもきた」の〇一甲板左舷ブルワーク付近から、本艦の〇一甲板右舷ブルワーク内にいる義信に対し、本艦内に入れるようになつたときに先任海曹室のロツカーから同一曹の身分証明書をとつてきてくれるよう依頼したことが認められる。
2 そこで、同一曹の右行為につき過失が存するか否かの判断はひとまず措き、同行為が、公権力を行使する同一曹の職務を行なうについてなされたものであるか否か(請求原因3(二))を検討する。
この点については、前記二6に認定したとおり、鈴木慶治一曹は、当日午後の勤務時間外に私用で外出するため、通門の際に提示を必要とする身分証明書を本件くん蒸作業後にとつてきてくれるよう、同一曹と同じ第三分隊に属する義信に対し、上官の命令としてではなく、私的に依頼したことが明らかである。しかも、当日が土曜日であること及び外出する際に身分証明書が必要であることからして、義信において、同一曹が身分証明書を必要とする理由は勤務時間外に私用で外出するためであることを当然に認識していたものと推認しうるのである。
したがつて、同一曹の右依頼行為をもつて、公権力を行使する職務を行なうについてなされたものとは解し得ないのであつて、単に右依頼行為が、義信の上官である同一曹により、両名の勤務時間内に、本艦付近においてなされたというだけでは、前示の如き依頼の内容、目的、形式及び推認される当事者の意思から明らかな私的依頼の事実を左右するわけにはいかず、原告らの前記主張は採用し得ない。
七 以上の次第で、原告らの本訴請求はその余の点につき判断するまでもなく理由がないからいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 麻上正信 板垣範之 小林孝一)
別紙 <省略>